インフルエンザに使用する薬剤
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■ インフルエンザに使用する薬剤
インフルエンザに使用する薬剤には、内服薬では「タミフル」「ゾフルーザ」、吸入剤では「イナビル」「リレンザ」があります。また、病院で点滴する「ラピアクタ」もあります。
インフルエンザ(Influenza/季節性インフルエンザ)とはインフルエンザウイルスによる急性感染症の一種で、流行性感冒とも言います。
原因となる病原微生物はインフルエンザ菌とは異なり、インフルエンザウイルスでA型、B型、C型に分類されます。C型は世界的な大流行(パンデミック)を起こすようなウイルスではなく、 また一般的に症状も軽症のため、流行性感冒を生じることはありません。
現在日本においてインフルエンザウイルスに使用する薬剤は、タミフル、ゾフルーザ、イナビル、リレンザ、ラピアクタ、シンメトレルの6成分です。(表)
これらの効果は根本的なものではなく、発症後早期(約48時間以内)に使用しなければ効果が期待できないといわれています。 インフルエンザウイルスの増殖速度はきわめて速く、1つのウイルスが24時間後には100万個にもなると言われています。ですから、できるだけ早い投与が効果的なのです。
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タミフル(成分 オセルタミビル)
カプセルとドライシロップがあります。
A型インフルエンザおよびB型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬です。ドライシロップは1歳未満の新生児・乳児にも適応があります。1日2回、5日間服用します。
厚生労働省の緊急安全情報発出などにより、2018年8月に「10歳代の未成年患者への原則禁忌」が解除になりました。(後述
「★異常行動について★」
参照)
タミフル(カプセル)
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ゾフルーザ(成分 バロキサビル マルボキシル)
A型およびB型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬で、2018年2月に承認されました。治療は1回服用するのみです。
詳しくは
こちら
をご覧ください。
ゾフルーザ錠
(塩野義製薬HPより)
■ リレンザ(成分 ザナミビル)
吸入剤です。
A型インフルエンザおよびB型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬です。
パウダー状の薬を自分で口から吸入する薬です。A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。2009年2月にリレンザも「異常行動」に注意するよう注意喚起されました。 リレンザはウイルスの感染している気道への投与であるため、タミフルよりもむしろ副作用が少なく、耐性ウイルスが生じにくいといわれています。 また、ウイルスを体内に残存させにくいという報告があります。5歳以上で使用できることになっていますが、小さいお子さんにはなかなか使いにくいのが難点です。
リレンザ
■ イナビル(成分 ラニナミビル)
吸入剤です。
A型インフルエンザおよびB型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬です。
パウダー状の薬を口から吸入する薬です。 A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。4歳以上で使用できることになっていますが、小さいお子さんにはなかなか使用しづらいのが難点です。 この薬は体内で変換されて活性化されるプロドラッグで、効果が長時間続くので1度の吸入ですみます。 リレンザが1日2回5日使用しなければならないのに比べ、1度の吸入で終了するため便利ですが、吸入に失敗すると十分な効果が得られません。 他の抗ウイルス薬と同様に使用後の「異常行動」に注意が必要です。
イナビル
<治療における使用方法>
10歳未満:1本を1度に使用(1度に4回吸入)
10歳以上:2本を1度に使用(1度に8回吸入)
■ ラピアクタ(成分 ペラミビル)
点滴静脈注射剤です。
A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。
医療機関内で静脈から点滴するタイプの薬です。1回の点滴(15〜30分くらい)で終了するので、薬の飲み忘れや吸入の失敗がありません。吸入剤が気分が悪くて使用できない、子供に飲ませづらいなどの場合に対応が可能です。 腎臓の機能が低下している場合には注意が必要です。他の抗ウイルス薬と同様に使用後の「異常行動」に注意が必要です。
ラピアクタ
■ シンメトレル(成分 アマンタジン)
もともとパーキンソン病の治療薬でしたが、抗ウイルス作用が知られるようになりました。A型インフルエンザにのみ有効です。添付文書では、シンメトレルは小児への安全性は確立されていないと記載されていますが、医師の判断で必要と思う場合には使用でき文献上では生後1ヶ月から報告があります。 しかし、アマンタジン耐性のインフルエンザウイルスが増えてきており、タミフルやリレンザと比べて有効性が低いという報告があります。
シンメトレル
■ アビガン(成分 ファビプラビル)
上記6成分のほかにアビガン錠が承認されていますが、本剤は新型インフルエンザが流行した場合にのみ製造するという条件付き承認となっています。
タミフル、イナビル、リレンザ、ラピアクタの4成分が「ノイラミニダーゼ阻害薬」であるのに対し、本剤は「RNA依存性ポリメラーゼ阻害薬」であり、作用のメカニズムが異なります。 このため、他の抗ウイルス薬が効かない場合にも効く可能性があります。エボラ出血熱に投与されたという報道がありました。
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★予防投与について★
タミフル、イナビル、リレンザ、シンメトレル
については予防的投与が認められていますが、その際には保険はきかないので自費診療扱いとなります。 また、インフルエンザの予防にはワクチンの接種が第一だといわれています。 まず、冬のシーズンには、うがい、手洗い、マスクの着用という生活上の基本を心がけることが大切です。
★異常行動について★
2007年にオセルタミビルを服用した10歳代の患者が転落して死傷する事例が相次いで報告されたことから、緊急安全性情報の発出や添付文書の警告欄の新設によって、 10歳代の未成年患者への使用は原則として差し控えられていました。 しかし、2018年8月に厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知にて、オセルタミビル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明という調査結果が報告され、 インフルエンザ罹患時には抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類に関わらず、異常行動が発現する可能性があることが明記されました。 そして、オセルタミビルを含めたすべての抗インフルエンザウイルス薬について、異常行動に対する注意喚起の記載が統一されました。
すべての抗インフルエンザウイルス薬において、服用後少なくとも2日間は特に小児や未成年者が一人にならないようにする必要があります。 なお、インフルエンザによって脳症が発症しても同様の症状が起こることがあります。
★解熱効果★
タミフル、ゾフルーザ、イナビル、リレンザ、ラピアクタの5剤の解熱効果に大差はないというのが一般的な見解です。 シーズンによって流行するインフルエンザのタイプにもよります。使い方に違いがあるので、医師、薬剤師に相談してください。
★学校への出席停止期間について★
インフルエンザによる学校の出席停止期間は、これまで「解熱後2日」と定められていました。 しかし、抗ウイルス薬の普及で解熱が早くなり、感染力が残ったまま登校するケースが増えたため、 2012年4月から
「発症後
5日
が経過し、かつ解熱後
2日
(幼児にあっては
3日
)が経過するまで」
と 基準が変更されました。
これは、発症後5日を過ぎればウイルスがほとんど検出されなくなるという報告を踏まえたものです。
(文責 下平秀夫) 2009年2月
2019年1月 更新
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